2026年10月10日
OEE(設備総合効率)とは? 計算式とどこから改善すべきか
初めてOEEを計算すると、たいてい思ったより低い数字が出ます。 「うちの設備はこんなに悪いのか」と感じますが、それが普通です。 OEEという指標がそういうものだから、という理由を含めて、計算の中身を見ていきます。
OEEとは
OEE(Overall Equipment Effectiveness/設備総合効率)は、 設備が本来の力をどれだけ発揮できたかを1つの数字で表したものです。 TPM(全員参加の生産保全)で使われる、製造現場でもっとも基本的な指標のひとつです。
特徴は、3つの別々の要素を掛け算で1本にまとめていることです。
| 要素 | 何を見ているか | 計算式 |
|---|---|---|
| 時間稼働率 | 止まらずに動いていたか | 稼働時間 ÷ 負荷時間 |
| 性能稼働率 | 本来の速さで動いていたか | (基準サイクルタイム × 生産数) ÷ 稼働時間 |
| 良品率 | 作ったものが使えたか | 良品数 ÷ 生産数 |
「動いていた時間」「動いていた速さ」「出来上がったものの質」を、それぞれ別に測って掛け合わせる。 これがOEEの考え方です。
実際に計算してみる
1日の生産を例にします。
就業時間 480分(8時間)。うち休憩・朝礼で 60分 止める予定。
実際には、故障で30分、段取り替えで40分、チョコ停で20分 止まった。
基準サイクルタイムは 30秒/個。作ったのは 600個、うち良品は 580個。
まず時間を整理します。
| 負荷時間(動かすつもりだった時間) | 480 − 60 = 420分 |
| 予定外の停止 | 30 + 40 + 20 = 90分 |
| 稼働時間(実際に動いていた時間) | 420 − 90 = 330分 |
| 理論上かかるはずの時間 | 30秒 × 600個 ÷ 60 = 300分 |
これを3つの式に入れます。
| 時間稼働率 | 330 ÷ 420 = 78.6% |
| 性能稼働率 | 300 ÷ 330 = 90.9% |
| 良品率 | 580 ÷ 600 = 96.7% |
| OEE | 0.786 × 0.909 × 0.967 = 69.0% |
3つとも悪くない数字に見えるのに、掛け合わせると69%になります。
なぜ低く出るのか(これが一番大事)
掛け算だからです。3つとも85%という「それなりに良い」状態でも、全体は61%にしかなりません。
| 3要素がそれぞれ | OEE |
|---|---|
| 85% ずつ | 0.85³ = 61.4% |
| 90% ずつ | 0.90³ = 72.9% |
| 95% ずつ | 0.95³ = 85.7% |
つまりOEEで85%を出すには、3要素すべてで95%前後が必要です。 これが「85%以上はワールドクラス」と言われる理由です。達成している工場はごく一部です。
| OEE | 評価 |
|---|---|
| 85%以上 | ワールドクラス。継続できる工場はごく一部 |
| 60〜85% | 良好。多くの優良工場がこの範囲 |
| 40〜60% | 一般的な製造現場の平均。改善の余地が大きい |
| 40%未満 | 大きなロスが隠れている可能性。まず内訳の把握から |
初めて計算して50%台でも、異常ではありません。 大事なのは他社と比べることではなく、自分の工程の推移を追うことです。
ロスを「個数」と「金額」に翻訳する
「OEE 69%」と言われても現場は動きません。失ったものを数で表すと、意味が変わります。
さきほどの例で、負荷時間420分すべてを本来の速さで動かし、全部良品だったとすると、
実際の良品は580個なので、260個を失っていることになります。内訳はこうです。
| 区分 | 個数 | 原因 | 粗利500円なら |
|---|---|---|---|
| 停止によるロス | 180個 | 故障・段取り・チョコ停(90分) | 90,000円 |
| 速度低下によるロス | 60個 | 本来より遅い運転 | 30,000円 |
| 不良によるロス | 20個 | 不良・手直し | 10,000円 |
| 合計 | 260個 | 理論最大840 − 良品580 | 130,000円 |
1日13万円。年間240日稼働なら約3,100万円です。 「69%」より「1日13万円」のほうが、改善の話は通ります。
改善はどこから手を付けるか
掛け算なので、もっとも低い率を上げるのが一番効きます。
さきほどの例で比べてみます。
| やること | 変化 | OEE |
|---|---|---|
| (現状) | 78.6% / 90.9% / 96.7% | 69.0% |
| 一番低い時間稼働率を10%上げる | 78.6% → 88.6% | 77.8% |
| 一番高い良品率を3%上げる | 96.7% → 99.7% | 71.2% |
良品率を99.7%まで上げるのは相当な労力ですが、OEEは2.2%しか上がりません。 一方、時間稼働率を10%上げれば8.8%上がります。
96%を99%にする努力より、78%を88%にする努力のほうが、同じ手間なら何倍も効きます。 どこを直すかを間違えると、頑張っているのに成果が出ない状態になります。
設備の7大ロス
OEEを下げる原因は、TPMでは伝統的に7つに分類されます。 どのロスがどの率に効くかを知っておくと、対策を立てやすくなります。
| ロス | 内容 | 効く率 |
|---|---|---|
| 故障ロス | 突発的な故障 | 時間稼働率 |
| 段取り・調整ロス | 品種切替、調整 | 時間稼働率 |
| 刃具交換ロス | 工具・刃物の交換 | 時間稼働率 |
| 立上りロス | 運転開始から品質が安定するまで | 時間稼働率 |
| チョコ停・空転ロス | 数分以内の細かい停止 | 性能稼働率 |
| 速度低下ロス | 設計速度より遅く運転 | 性能稼働率 |
| 不良・手直しロス | 不良品、手直し | 良品率 |
チョコ停が一番見つけにくい
1回30秒の停止でも、1日に40回あれば20分です。 記録に残らないことが多いため、「なぜか計画数に届かない」の正体がこれであることは珍しくありません。
故障なら日報に書きますが、材料を直してすぐ動いた30秒は誰も書きません。 性能稼働率が妙に低いときは、まずここを疑ってください。
よくある間違い
計画停止と予定外停止を混ぜている
これが一番多い間違いです。
- 計画停止(休憩・朝礼・計画保全・受注がなく動かさない時間)→ 負荷時間から引く
- 予定外の停止(故障・段取り・チョコ停)→ 負荷時間に含めたうえで、稼働時間から引く
休憩時間を「故障停止」に入れてしまうと、OEEが実態より高く出ます。 数字は良くなりますが、意味のない指標になります。
性能稼働率が100%を超える
基準サイクルタイムの設定が実態と合っていません。 「本来この設備が出せる最速」を基準にすべきところ、 余裕を見込んだ計画値を入れている可能性が高いです。設備の仕様書を確認してください。
設備稼働率とOEEを同じものと思っている
違います。「設備稼働率」は一般に時間稼働率だけを指すことが多く、 速度の低下や不良は考慮されません。
そのため設備稼働率90%なのにOEEは60%ということが普通に起こります。 「動いてはいたが、遅かったし不良も出ていた」という状態です。
関連する指標との関係
OEEの3要素のうち良品率は、歩留まりと近い指標です。 歩留まり・不良率・直行率の違いは 歩留まり・不良率・良品率・直行率の違いにまとめています。
また「1個あたり何秒で作らなければ間に合わないか」を見る タクトタイムは、OEEとは別の切り口です。 OEEが「設備の実力」を測るのに対し、タクトタイムは「客先の要求」から決まります。
計算する
下のツールに時間と生産数を入れると、3要素とOEEを自動で計算します。 どの要素が足を引っ張っているかを判定して、それを10%改善したときのOEEも表示します。 失った生産数を停止・速度・不良に分けて個数と金額で出すので、 改善の優先順位をそのまま決められます。