2026年10月10日

老後資金はいくら必要? 2000万円問題の中身と自分の数字の出し方

「老後2000万円問題」という言葉だけが独り歩きしていますが、 あの数字は特定の条件で計算された、1つの例にすぎません。 中身を分解して、自分の場合はいくらになるのかを出せるようにします。

2000万円はどこから来たのか

元になったのは、2019年の金融庁の報告書です。 計算そのものは単純で、たった1つの引き算と1つの掛け算でできています。

高齢夫婦無職世帯の家計調査で、毎月の支出が収入(年金)を約5.5万円上回っていた。
この不足が30年続くとすると —

5.5万円 × 12か月 × 30年 = 約1,980万円

これが「2000万円」の正体です。

つまり2000万円という金額そのものに意味はありません。 意味があるのは「毎月いくら足りないか」と「何年それが続くか」という2つの数字です。 この2つが違えば、答えは1000万にも4000万にもなります。

自分の数字を出す

必要なのはこれだけです。

毎月の不足額 = 老後の生活費 − 年金
必要な老後資金 = 毎月の不足額 × 12 × 老後の年数

たとえばこういう場合

生活費が月25万円、年金が世帯で月14万円、65歳から95歳までの30年とすると、

毎月の不足25 − 14 = 11万円
年間の不足11 × 12 = 132万円
30年分132 × 30 = 3,960万円

2000万円どころか約4000万円になりました。 生活費と年金の見積もりが違うだけで、ここまで変わります。

ただし、残ったお金にも利回りがつく

上の計算は「タンス預金から取り崩す」前提です。 実際には残っているお金が運用されていれば、その分だけ長持ちします。

たとえば36歳・貯蓄300万円・毎月3万円積立・利回り3%で65歳まで続けると、 退職時点で約2,335万円。 そこから年132万円ずつ取り崩すと、91歳で尽きる計算になります。

単純計算では3,960万円必要でしたが、 運用を考えると2,335万円で91歳まで持ちます。この差が利回りの効果です。

数字の決め方

年金額 — ここが一番効きます

「ねんきん定期便」(毎年誕生月に届くハガキ)か、 日本年金機構の「ねんきんネット」で実際の見込み額を確認してください。

月1万円違えば、30年で360万円変わります。 どの数字よりも、ここを正確にする価値があります。

目安としては、国民年金だけなら1人あたり月6〜7万円程度。 厚生年金に加入していた期間があれば、それに応じて上乗せされます。 共働きの夫婦なら世帯で月20万円を超えることもあります。

老後の生活費 — 今の7〜8割から

子どもが独立し、住宅ローンが終わっていれば支出は減ります。 一方で、医療費・家の修繕・車の買い替えは増えます。

毎月の生活費とは別に、まとまった出費が数百万円ぶん必要になることも見込んでおいてください。 屋根の葺き替え、給湯器の交換、車の買い替えなどは、月々の家計には乗ってきません。

利回り — 低めで成り立つか確認する

預金にほぼ置いているなら0%で計算してください。それが現実です。

投資信託などで運用しているなら、いくつかの数字で幅で見るのがおすすめです。 高い利回りを前提にすると、実現しなかったときの落差が大きくなります。 低めの数字で成り立つ計画かどうかを先に確認してください。

足りないときに効く打ち手(効果の大きい順)

  1. 退職年齢を延ばす — 一番効きます。積立期間が伸び、取り崩し期間が縮むので両側から効く。65歳を70歳にするだけで結果が大きく変わります
  2. 年金の受給を遅らせる(繰下げ受給) — 1か月あたり0.7%ずつ増え、70歳まで待てば42%増。しかも一生続きます
  3. 老後の生活費を見直す — 毎月1万円の差が30年で360万円
  4. 積立額を増やす — 効きますが、期間が短いと効果は限定的

1番と2番が圧倒的に効きます。 「積立を増やす」から考える人が多いのですが、 40代以降なら、働く期間を延ばすほうが現実的で効果も大きいことが多いです。

この計算に入っていないもの

シミュレーションは万能ではありません。次のものは含まれていません。

これは試算であり、将来を保証するものではありません。 大きな判断の前には公的な情報を確認するか、 ファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談ください。

まず手取りを把握する

「毎月いくら積み立てられるか」を決めるには、手元に残る金額を知る必要があります。

手取りは額面の何割?で引かれるものの内訳を、 手取り計算ツールで実際の金額を確認できます。 そこから生活費を引いた残りが、積立に回せる上限です。

自分の推移を見る

下のツールに今の貯蓄額と積立額を入れると、 老後の資産がどう減っていくかをグラフで表示します。 何歳で尽きるか、想定年齢まで持たせるには毎月あといくら必要かも自動で逆算します。

退職年齢を1歳ずつ変えてみると、1番の打ち手がどれだけ効くかが目で分かります。