2026年10月10日

手取りは額面の何割? 引かれるものの内訳と計算方法

「手取りは額面の8割」とよく言われます。 だいたい合っていますが、何が引かれているかを知らないと、 給与明細がおかしくても気づけません。内訳を1つずつ見ていきます。

結論:だいたい75〜85%。収入が高いほど割合は下がる

引かれるものは大きく2つに分かれます。

引かれるもの計算のもと目安
健康保険料標準報酬月額約5%
厚生年金保険料標準報酬月額9.15%
介護保険料標準報酬月額約0.8%(40〜64歳のみ)
雇用保険料総支給額0.55%前後
所得税課税所得5〜45%(累進)
住民税前年の課税所得約10%

上4つが社会保険料、下2つが税金です。 税金は収入が高いほど率が上がるので、年収が増えるほど手取りの割合は下がっていきます。

月給28万円で計算してみる

36歳・扶養なしの場合、社会保険料だけでこれだけ引かれます。

健康保険料280,000 × 10% ÷ 2 = 14,000円
厚生年金保険料280,000 × 18.3% ÷ 2 = 25,620円
雇用保険料280,000 × 0.55% = 1,540円
社会保険料の合計41,160円(額面の14.7%)

ここに所得税と住民税が加わって、手取りは22万円前後になります。

「÷2」があるのは、会社が半分払っているからです(労使折半)。 健康保険料も厚生年金も、実際には同じ額を会社が負担しています。 給与明細に出てくるのは本人負担分だけです。

社会保険料は「給与そのもの」には掛からない

ここが多くの人に知られていない仕組みです。

健康保険・厚生年金・介護保険は、実際の給与に率を掛けるのではありません。 給与を段階(等級)に当てはめた標準報酬月額という金額に率を掛けます。

月給が28万円でも29万円でも、どちらも標準報酬月額は同じ等級に入ることがあり、 その場合は社会保険料がまったく同じ額になります。

等級は健康保険で50段階、厚生年金で32段階。 この仕組みを無視して「額面 × 率」で計算しているツールや記事が多いため、 給与明細と数百円〜千円ずれることがあります。

4〜6月の残業が1年間響く

標準報酬月額は、毎年4〜6月の平均給与をもとに9月から改定されます(定時決定)。

つまり4〜6月に残業が多いと、その年の9月から翌年8月までの社会保険料が高くなります。 「4〜6月は残業しないほうがいい」と言われるのはこのためです。

ただし厚生年金を多く払えば、将来の年金額は増えます。損得は一概には言えません。

入社2年目に手取りが減る理由

住民税は前年の所得にかかります。 収入がなかった年の翌年、つまり入社1年目は引かれません。 2年目の6月から引かれ始めます。

そのため「給料は上がったのに手取りが減った」という現象が起きます。 新社会人が驚くのはたいていこれです。

1年目の手取りを基準に生活を組むと、2年目に苦しくなります。 最初の年は、住民税の分(額面の約10%)を先に取り分けておくと安全です。

通勤手当の扱い

通勤手当は月15万円までは所得税がかかりません(公共交通機関の場合)。 そのため額面には含まれますが、税金の計算からは除かれます。

ただし社会保険料の計算には含まれます。 通勤手当が多いと標準報酬月額が上がり、社会保険料が増えることがあります。 「税金はかからないが、保険料はかかる」と覚えてください。

給与明細と合わないときに疑うところ

手取りを増やす方法について

制度として使えるものには、iDeCo(掛金が全額所得控除)、企業型DC、 生命保険料控除、ふるさと納税などがあります。

ただしどれが有利かは収入や家族構成によって変わります。 具体的な判断は税理士やファイナンシャルプランナーにご相談ください。 この記事もツールも、計算をするだけで個別の助言は行いません。

残業代と手取りの関係

残業代が増えると手取りも増えますが、同じ割合では増えません。 社会保険料の等級が上がると、保険料も段階的に増えるためです。

残業代そのものの計算は 深夜手当はいくら?で解説しています。 深夜割増の計算や、月60時間を超えたときの50%割増もそちらにまとめています。

計算する

下のツールは標準報酬月額の等級表を実装しているので、 「額面の8割」といった概算より実際の給与明細に近い数字が出ます。

月給・時給のどちらでも計算でき、賞与、通勤手当、40歳以上の介護保険、 入社1年目(住民税なし)にも対応しています。 保険料率は毎年変わるため、自分で変更できるようにしてあります。 組合健保の方は、実際の料率を入れてください。

この手取りで老後まで足りるかを見たい場合は、 老後資金シミュレーションで資産の推移を確認できます。