2026年10月10日

タクトタイムとサイクルタイムの違い|計算式とボトルネックの見つけ方

この2つは似た言葉ですが、決まり方がまったく違います。 片方は客先が決め、もう片方は現場が決める。 ここを分けて考えられるかどうかで、生産計画の立て方が変わります。

結論:決める人が違う

用語意味誰が決めるか
タクトタイム 1個を何秒で作らなければいけないか(目標) 客先(必要数から決まる)
サイクルタイム 実際に1個作るのに何秒かかっているか(実力) 現場(作業から決まる)

タクトタイムは現場の頑張りでは変えられません。 注文が増えればタクトタイムは短くなり、減れば長くなる。それだけです。

変えられるのはサイクルタイムの方だけ。 だから改善の話をするときは、必ず「サイクルタイムをどう縮めるか」になります。

タクトタイムの計算

タクトタイム = 稼働時間 ÷ 必要生産数

1日450分(休憩を除いた実働)で500個必要な場合、

450分 × 60 = 27,000秒 ÷ 500個 = 54秒

54秒に1個ずつ完成させないと間に合わない、という意味です。

稼働時間に休憩を入れてはいけません

ここを間違えると、計画がまるごと狂います。 入れるのは実際に生産できる時間だけです。

実態より長い時間を入れると、タクトタイムが緩く出て 「計算上は間に合うはずなのに間に合わない」という状態になります。

判定はとても単純

サイクルタイム ≦ タクトタイム なら間に合う

実際の作業が54秒より速ければ間に合い、遅ければ間に合いません。それだけです。

ラインの速さは「一番遅い工程」で決まる

ここが実務で一番大事なところです。

3つの工程が 20秒・50秒・25秒 だとします。合計は95秒ですが、 ラインから製品が出てくる間隔は50秒に1個です。

工程作業時間手待ち
組立20秒30秒
検査50秒0秒(ボトルネック)
梱包25秒25秒

この50秒の工程をボトルネック工程と呼びます。 前の工程がいくら速くても、50秒の工程の前で滞留するだけです。

20秒の工程を15秒に改善しても、生産数は1個も増えません。 改善すべきは50秒の工程だけです。

ここを間違えると、努力しているのに成果が出ない状態になります。 「全工程を少しずつ速くする」のは、もっとも効率の悪いやり方です。

2つの「合計時間」を混同しない

さきほどの例で、95秒という数字も意味を持ちます。ただし別の意味です。

数字意味
50秒(最も遅い工程)製品が出てくる間隔。1時間で何個作れるかはこれで決まる
95秒(全工程の合計)リードタイム。1個が最初から最後まで通り抜けるのにかかる時間

生産数を聞かれたら50秒、納期を聞かれたら95秒。使う場面が違います。

ラインバランス効率

工程間の作業時間の差を表す指標です。

ラインバランス効率 = 全工程の合計 ÷ (最も遅い工程 × 工程数)

さきほどの例だと、

95 ÷ (50 × 3) = 63.3%

100%に近いほど、各工程の作業時間が揃っています。 63%というのはかなり偏っている状態で、 手待ちの時間(組立30秒+梱包25秒)が毎回発生しています。

裏を返せば、設備も人も増やさずに改善できる余地が大きいということです。 検査の作業の一部を、手待ちしている組立や梱包に移せばいい。

間に合わないときの4つの打ち手

サイクルタイムがタクトタイムを超えている場合、打てる手はこれだけです。効く順に並べます。

  1. ボトルネック工程を改善する — 作業の分割、治具の追加、動線の見直し。効果が最も大きい
  2. 作業を振り分ける(ラインバランス改善) — ボトルネックの作業を、手待ちしている工程へ移す。設備も人も増やさずに済むので、まず検討する価値がある
  3. ラインを増やす/人を増やす — 即効性はあるが、設備と人員の余裕が要る
  4. 稼働時間を延ばす(残業) — 一番手軽だが、コストが上がり続けられない

多くの現場で3番と4番から手を付けますが、2番を先に検討すべきです。 バランス効率が低いほど、ここに余地があります。

歩留まりを見込むときは割り算

不良が出る前提なら、必要数ぶんだけ流しても足りません。 歩留まり95%で500個ほしいなら、

500 ÷ 0.95 = 約527個

ここで 500 × 1.05 = 525 と計算すると足りません。 割合の計算は掛け算ではなく割り算です。

投入数が527個に増えると、タクトタイムも 27,000 ÷ 527 = 51.3秒に縮みます。 歩留まりが悪いほど、要求される速度は上がります。

この関係は歩留まり・不良率・良品率・直行率の違いでも扱っています。

OEEとの違い

似た場面で使われますが、見ているものが違います。

指標何を見るか
タクトタイム計画:客先の要求に対して間に合うか
OEE(設備総合効率)実績:設備が本来の力をどれだけ出せたか

タクトタイムは「これから間に合わせられるか」、 OEEは「昨日どれだけロスしたか」。両方セットで見ると、計画と実績の差が分かります。 OEEについてはOEE(設備総合効率)とは?にまとめています。

よくある疑問

1人で複数工程を受け持っている場合は?

その人が担当する工程の時間を合計して、1つの工程として扱ってください。 1人が受け持つ作業の合計時間が、その人の実質的なサイクルタイムになります。

ピッチタイムとは違うの?

ほぼ同じ意味で使われます。職場によって呼び方が違うだけで、 「1個が出てくる間隔」を指す点は共通しています。

設備の停止や不良も考えたい

タクトタイムの計算には入りません。 停止時間や速度低下まで含めた総合的な効率を見たい場合は、OEEを使ってください。

計算する

下のツールに稼働時間と必要生産数を入れると、タクトタイムが出ます。 工程ごとの作業時間を入れれば、ボトルネック工程を自動で判定し、 タクトタイムの線を重ねたグラフで、どの工程が超えているかを示します。

間に合わない場合は、短縮すべき秒数・必要な残業時間・必要なライン数・各工程の手待ち時間を 数字で出すので、4つの打ち手のどれを選ぶかをその場で比べられます。